警備員や交通誘導、監視などの業務には残業代がつかないってホント?

2020年6月19日16,211 view

警備員

監視業務や断続的労働に該当する業務は、労働基準監督署長に申請し、許可を得た上で労働基準法で定められた労働時間や休日・休憩に関する規定が除外されます。どちらの業務についても身体的疲労や精神的緊張が少ないことが条件となりますが、警備業務については業務内容が多様化しているため、業務実態に即して判断されることとなります。

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「監視」と「断続的労働」は残業代が発生しない

守衛

一般的には、1週40時間・1日8時間の法定労働時間を超えると、割増賃金が発生します。しかし、監視や断続的労働に従事する者は恒常的に精神的緊張の度合いが少なく、労働としては密度が低いため、法定労働時間を超えたからといって割増賃金の支払い対象とすることは適切ではないと考えられています。

監視に従事する者

「監視に従事する者」とは、一定の部署に属しており、主に監視の業務に従事する者で、普段から身体的疲労や精神的緊張が少ない業務に就いている者のことを言います。

監視業務の例

ここでいう「監視」の業務は、以下のような業務内容が該当します。いずれも、ほとんど緊張が強いられることはない業務であることがわかるのではないでしょうか。

  • マンションの守衛
  • 豪邸の門番
  • パーキングメーターの監視員
  • 溶接工場で使用する溶接のための火の番
  • 警備業務(ただし業務実態に即して判断) 等

例外

ただし、以下のような業務を行なう者については、「監視に従事する者」には該当しません。

  • 交通関係の監視業務
  • プラント等の計器類の監視業務
  • 爆発物管理など危険な場所での監視業務 等

断続的労働に従事する者

「断続的労働」とは、ある業務のための作業時間が発生してもそれが長く続くことがなく中断し、手待ち時間を経て再び同じような作業が発生するが、また中断するという状態が繰り返される業務のことを言います。

断続的労働の例

  • 役員など専属の自動車運転者
  • 製パン業で作業工程が分業化されている場合の、仕込・分割整形工程・焙焼工程の業務
  • 修繕担当など、通常は業務閑散であり、事故発生に備えて待機している業務。
  • 貨物の積卸、寄宿舎の賄人など、手待ち時間が作業時間(実労働時間)と同等以下である業務(但し、作業時間が8時間を超える業務を除く)
  • 鉄道踏切番などで、1日当たり10往復程度以下である業務。
  • 警備業務(ただし業務実態に即して判断)

例外

  • 労働や手待時間の身体疲労または精神的緊張が高い業務
  • ある一日は断続的労働で、他の日は通常勤務を行う場合
  • 継続的に作業が発生する業務で、その業務の途中に複数回の休憩時間を挟んで人為的に断続的な業務の形態にした場合

監視または断続的労働に従事する際の注意点

監視または断続的労働に従事する場合に、従業員として注意しておきたいことがあります。これらの業務に従事する者は、法律上の労働時間や休憩・休日の規定が除外されますが、まちがった形で適用除外されていないかどうか、自分でも把握しておいたほうがよいでしょう。

「断続的労働」と通常業務を兼務している場合は適用除外

断続的労働に該当する業務と、通常の業務を兼務している場合は、「断続的労働に従事する者」には該当しません。

たとえば、役員専属の運転手と経理業務を兼務している場合は、一日のうちで運転手の業務に就いている時間帯もあれば、経理業務に就いている時間帯もあるでしょう。その場合は「断続的労働に従事する者」とは言えず、断続的労働と通常業務の両方に従事する者は労働時間や休日、休憩について労働基準法の規定に従うこととなります。

ただし、断続的労働と通常業務が1日のうちに混在している場合は「断続的労働に従事する者」の規定が適用除外となりますが、日や週の単位で業務が切り替わる場合は対象となる日や週でその規定が適用されることとなります。

深夜労働は適用除外されない

監視または断続的労働に従事する者は、残業代の支払い対象からは除外されますが、法律上、深夜労働に関する規定は適用除外とはなりません。

監視または断続的労働に従事する者については、他の業務に従事する者と同様に、午後10時~翌午前5時までの時間帯に働いた場合には深夜労働に関する割増賃金を支払ってもらうことができます。

労働基準監督署に申請・許可を受けることが必要

監視または断続的労働に従事する者に関して、労働時間や休憩、休日などの適用を除外しようとするときには、労働基準監督署長に申請し、許可を受けることが必要です。

申請書を提出した後は、労働基準監督署の実地調査が入ります。なお、許可を受けても、業務実態によっては労働基準監督署の指導が入ることもあります。

実際に、平成23年には、東京都多摩地区(八王子・立川・青梅・三鷹・町田)の労働基準監督署が中小警備会社に対する集団指導を強化したことがあります。これは、多摩地区にある中小警備会社の従業員から、解雇や労働条件の切り下げ、会社都合の休業手当未払いなどの相談や申告が他業種よりも多く寄せられたことから、多摩地区の5つの労働基準監督署が集団指導や立入調査を実施したものです。(※1)

※1:坂本直紀 社会保険労務士法人「中小警備業 集団指導 (労働新聞 平成23年7月25日 )」

警備員の場合は業務実態で残業代支払いの対象となるかを判断

警備員

警備員の業務は、業務を行う場所や目的によって多種多様です。そのため、ひとくちに「警備員」と言っても「監視」や「断続的業務」にあたる場合もあれば、それらには該当しない場合もあります。

警備員の業務が「監視」に該当する場合

労働省労働基準局長の通達によると、警備員の業務が「監視」に該当する場合は以下の通りです。

  • 一定の部署に所属しながら監視を行うことが本来の業務であり、なおかつ常態として身体の疲労及び精神的緊張の少ないこと。
  • 勤務場所が危険でなく、また、湿度、温度、騒音、粉塵濃度などの観点から有害ではないこと。
  • 1勤務の拘束時間が12時間以内であること。
  • 勤務と、次の勤務との間に10時間以上の休息期間が確保されていること。

(参考:平5.2.24基発110号)

一方、前掲の通達によれば、以下の業務については身体の疲労や精神的緊張が少なくないと考えられるため、「監視」の業務には該当しないとされています。

  • 交通誘導業務
  • 必要に応じて身体検査や手荷物検査を行う業務
  • 駐車場で料金を徴収したり、車両を誘導する業務
  • 常態としてテレビモニターなど警備業務用機械装置で監視する業務
  • 異常事態に際して特に高度な技術または判断を要する措置を行う業務

警備員の業務が「断続的労働」に該当する場合

また、警備員の業務が「断続的労働」に該当するのは、以下のような場合です。

  • 常態として定期的な巡視、施錠及び開錠、緊急の文書または電話の収受、不意の来訪者への対応、非常事態発生の対応などの業務が中心で、あまり労働の必要がないこと。
  • 巡視を行う場所が危険な場所でないこと
  • 精神的緊張の度合いが少ないこと
  • 巡視の回数が1勤務当たり6回以下で、なおかつ巡視1回の所要時間が1時間以内で、その合計が4時間以内であること。
  • 1勤務の拘束時間が12時間以内であること(ただし、当該勤務中の夜間に継続4時間以上の睡眠時間が与えられる場合には16時間以内)。
  • 勤務と次の勤務との間に10時間以上の休息期間が確保されていること(但し、当該勤務中の夜間に継続4時間以上の睡眠時間が与えられる場合には8時間以上)。

(参考:平5.2.24基発110号)

ただし、以下のような業務は「断続的労働」に該当しません。

  • コンビナート、空港、遊園地など警備対象が広大である警備。
  • その構造上外部からの侵入を防止することが困難な警備。
  • 高価な物品が陳列、展示または保管されている場所の警備。

警備員の業務などに残業代が発生するかどうか不明な場合は弁護士に確認を

自分が行っている業務が監視や断続的労働にあたるかどうかが不明な場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談して確認してみることをおすすめします。弁護士であれば、業務実態に即して監視又は断続的労働に該当するか否かを調べてもらえるでしょう。

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