サブロク協定(36協定)を知っていますか?―意外と知らない労働基準法―

2020年6月19日7,380 view

サブロク協定

昨今では長時間労働による過労死や自殺が報道されたこともあり、労働に対する社会の意識が変わりつつあるのかもしれません。しかし、労働基準を超える勤務実態や、サービス残業をさせられるなどの現状があることも事実です。労働者は自分の身を守るために、法律で定められている労働基準について知っておく必要があるのではないでしょうか。ここでは、労働基準法における業務時間についての規定、通称「36協定」について解説していきます。

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サブロク協定(36協定)とは何か

残業が多い、残業代が支払われていないなどで悩んでいませんか。36協定を知るには、まず労働基準法で定められた条件について押さえておく必要があります。ここでは、労働基準法と36協定の関係に留意しながら、解説をしていきます。あなたの業務が36協定に違反していないかチェックしてみてください。

労働基準法第36条

労働基準法第36条とは、労働基準法で定められている法定労働時間、法定休日を超えて、業務を行わなければならない場合は、その定める範囲において、労働をさせることができるとしたものです。そのためには、あらかじめ労使で書面による協定を締結し、これを所轄労働基準監督署長に届け出ることが必要です。この協定のことを労働基準法第36条に規定されていることから、通称「36協定」といいます。あなたの勤務先は36協定の届出をきちんと行っているでしょうか。

法定労働時間・法定休日について

法定労働時間とは、1日8時間、1週40時間(特例措置対象事業場については 44 時間)と定められていますが、変形労働時間制を採用する場合を除いて、この時間を超えて労働させる場合は時間外労働となります。また、法定休日とは1週間に1日の休日(変形休日制を採用する場合は4週4日)と定められていますが、この休日に労働させる場合は休日労働となります。

残業時間の限度

36協定において、残業時間の限度は下記の表のように定められています。ただし、建設業や自動車の運転業務、研究開発の業務などは、限度時間の適用から除外されています。また、特別条項付き協定を締結することによって、残業時間が全体として年の半分を超えない範囲の見込みであれば、臨時的に時間外労働を行わせることができるとし、これには限度となる時間が示されていません。

さらに、育児・介護休業法に基づく延長時間の限度についても、小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者又は、要介護状態の対象家族の介護を行う労働者が請求した場合においては、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、1箇月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせることはできないという、内容も盛り込まれています。

限度時間基準
期間 一般の労働者 対象期間が3箇月を超える1年単位の変形労働時間制の対象者
1週間 15時間 14時間
2週間 27時間 25時間
4週間 43時間 40時間
1ヶ月 45時間 42時間
2ヶ月 81時間 75時間
3ヶ月 120時間 110時間
1年 360時間 320時間

残業代の支払い

法定時間外労働をさせた場合は2割5分以上、法定休日労働をさせた場合は3割5分以上の割増賃金を支払う必要があります。使用者は、これ以上の金額を支払わなければならず、さらに大企業については、時間外労働が1箇月60時間を超える場合には、5割以上の割増賃金を支払わなければならないとしています。なお、中小事業主は、平成31年3月まではこの適用が猶予されています。

サブロク協定(36協定)違反は労働基準監督署へ申告

36協定に違反するような労働を強いられていた場合、まずは会社と話し合いを持つことが大切です。もちろん話し合いによって解決することが一番ですが、それでも改善されない場合には、労働基準監督署へ申告をすることができます。申告を受理した労働基準監督署は申告書に基づいて調査を行い、必要に応じて行政指導や是正勧告を行うという流れになります。

申告は書面で提出しよう

ここからは、申告の方法について見ていきましょう。
労働基準監督署へ申告は、口頭か書面で行うことができますが、書面で提出した方が、より確実と言えます。専門家に依頼をしなくても、自分で作成することが可能です。

申請書の書き方

申請書に、決まった書式はありませんが、次に挙げる項目を参考に作成し、提出するといいでしょう。

  • 表題として「労働基準法違反に関する申告書」
  • 提出日
  • 申告者の氏名・連絡先
  • 違反者の会社名・代表者名・連絡先
  • 申告者の業務内容
  • 労働基準法に違反する内容
  • 是正措置の申立てと求める内容
  • 添付資料

添付資料としては、出勤簿の写し、給与明細書、その他違反を証明できる電子データも提出ができます。提出の際には、必ず写しやデータのコピーを使用して、原本は手元に保存しておくようにしてください。

申告してもダメだったら、いよいよ告訴

労働基準監督署へ相談や申告を行っても、動いてもらえなかった場合や、動いてくれたけど何も解決に至らなかった場合には、刑事告訴することが可能です。

告訴状の作成は自分でもできる

告訴状の作成は自分でもできます。告訴状を受理した労働基準監督署は、当該事件を調査し書類送検しなければならないので、なかなか受理したがらないという実情もあるようです。申告よりは少しハードルが上がりますがしっかりとした文書を作成して、提出しましょう。書類に不備がなければ、受理されない理由はありません。

告訴状の書き方

注意点として、必ず刑法と刑事訴訟法に則って、「処罰を求める」内容を記載してください。告訴状は労働基準局が書類送検することを求めるものですから、その点を意識して書く必要があります。記載すべき項目は以下の通りです。

  • 表題として「告訴状」
  • 提出日
  • 告訴人の住所・氏名・連絡先
  • 告訴人の会社名・代表者名・連絡先

ここまでは、申告書とあまり変わりません。ここからは、「処罰を求める」内容です。

告訴の趣旨

「被告訴人は○○の罪に該当すると思料するので、処罰されたく告訴いたします。」と、明確に示します。

告訴の事実

実際にどのような違反行為があったのか、残業時間や未払いの賃金について、詳細に記述します。また、会社側と話し合いを行ったこと、労働基準局が是正勧告をした場合には、その点も書いておきましょう。

添付資料

証拠となる出勤簿、給与明細、業務命令を受けた際のメール文など、提出ができます。申告の時と同様に、必ず写しを提出するようにしてください。

インターネットで「告訴状」を検索すると、刑事告訴の作成方法が出てきますので、参考にするとよいです。イメージとしては、刑事告訴の告訴状と同様です。

残業が多いと感じたら、サブロク協定(36協定)の確認を

長時間労働や休日出勤は仕方がないと思っていませんか?もし、業務の量が多すぎるのではないかと思っていたら、勤務先が36協定の届出をしているか確認をしてみてください。そもそも、労働基準監督署の行う監督とは、未払いの残業代を支払わせるためのものではなく、労働者の健康被害を予防するためのものです。あなたも健康を害してしまう前に、行える対応について検討してみる必要があるかもしれません。また、労働問題に強い弁護士に相談してみることをおすすめします。

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