オワハラに遭った時の対処法|就職活動がもうできない?!

2020年6月19日19,277 view

オワハラ

「オワハラ」という言葉をご存知でしょうか。オワハラとは「就職活動オワレハラスメント」を略した造語で、内定と引き換えに就職活動を辞めるよう候補者に迫る行ためを指します。しかし前途ある就活生にしてみれば一つの企業に拘束されてはたまったものではありません。そこで今回はオワハラに遭った時の対処法等を解説します。

オワハラとは?オワハラの実態

オワハラ

オワハラとは就職活動オワレハラスメントの略で企業が優秀な人材を囲い込むために採用したい就活生に就職活動を終えることを迫ることです。

オワハラとは

ここ2~3年の間でオワハラというフレーズを耳にするようになりました。しかし企業が優秀な人材を引き留める行ため自体は何も今に始まったことではなく、昔から一定数あったことです。ではどのような経緯で注目されるようになったのでしょうか。

きっかけは解説動画

2015年に動画投稿サイトユーチューブにNPO法人がオワハラについての動画をアップロードしたことが、“オワハラ”というワードが世に出たきっかけです。この時点での認知はせいぜいその年の就活生や大学、大学生及び企業採用担当者等の当事者間程度にとどまっていたと思われます。

現在では就活生の悩みの一因子

しかし同年の流行語大賞にもノミネートされ、この言葉が世間一般に広まったのです。現在ではオワハラを取り扱った書籍やwebサイトが企業側、就活生側、いずれのスタンスのものも多数見られ就職活動にまつわる問題の一つとして取り上げています。「2017新卒採用の最新動向調査」では、約2割の学生が「オワハラと感じる出来事があった」と回答しており、就活生の悩みのひとつとなっていることが分かります。

オワハラの事例

就職活動を辞めさせて自社に入社させる目的は共通していても、その手口は様々です。ここではその中でもありがちなケースを紹介していきます。

内定と引き換えに就職活動を終えるように要求する

オワハラの典型例がこれでしょう。その時点で確定している他企業の内定を断れば自社の内定を与える、或いは今後他の企業を受けない、即ち就職活動を辞めるなら内定を出すといった具合に取引を持ち掛けてくるケースです。

面接期間を故意に伸ばし、他企業の採用試験に行くことを阻む

面接の期間や回数を必要以上に設けることによって就活生を拘束し、他の企業の採用試験や面接に行けない様にする手口です。このケースは意図的であるか否かの判断が難しいですが、就活生にとっては志望度の高い企業を受けられない可能性もあり、厄介と言えます。

親交を深め、断りづらい状況に持ち込む

また企業が内定を出した後、食事に誘ったり、プライベートでの親睦を図る等して友好を深め、内定を辞退させない様に仕向けるケースもあります。実際に、企業が内定を出した学生に高級料理をご馳走することで恩を売り就職活動を辞める様迫った事例も報告されています。

オワハラについて掘り下げる

オワハラ

近年、就活生を悩ませているオワハラと言う名のこの悪質な囲い込みですが、度が過ぎれば違法になり得ます。ここではオワハラの違法性や増加の背景について検証していきます。

悪質なオワハラは違法

そもそも内定は「始期付・解約権留保付労働契約」とされ、内定が出た時点で労動契約が成立することになります。従って、全てのオワハラが法律違反になる訳ではありません。しかし、強硬な手段をとる等悪質な場合は違法になります。

刑法上の脅迫罪や強要罪に該当することも

悪質なオワハラは脅迫罪(刑法222条)や強要罪(刑法223条)等の問題となることがあります。脅迫罪は生命、身体、自由、名誉又は財産に対して、一般人を畏怖させることができる程度の害悪の告知をした場合に成立するものです。

例えば「就職活動を終えなければ、今後君の身に何が起きても知らないからね」とか「他の企業を辞退しなければ損害賠償請求する」といった文言でオワハラを受けた場合は、語気の強さ、威圧度合、場所によっては脅迫罪に該当します。しかし、「内定が欲しいなら今すぐ他の企業に辞退の電話を入れて」、「就職活動を続けていることが分かった場合は内定を取り消す」等と言われた場合は、条件付きの労働契約の申出がされているに過ぎず、脅迫罪は成立しません。

一方強要罪は脅迫または暴行を用いて、他人に義務のないことを行わせた場合等に成立します。尚これに関して該当するケースは、土下座をする様に強く迫ったケース位のもので、ほとんどの場合成立しないと思って間違いありません。

民法上の不法行ためにあたることも

また、民法上の不法行ため責任(民法709条、710条)が成立することがあります。例えば企業の執拗なオワハラによって就活生が精神的ダメージを被った場合、その精神的苦痛に対する損害賠償責任が発生する可能性はあります。

悪評が立つ可能性も

加えて、企業の悪評が広まるリスクもあります。特に最近の就活生は、完全な“デジタルネイティブ世代”です。大半がSNSを始めとしたインターネット使用していて悪い噂は瞬く間に流出、拡散します。そうなると、企業にとって次年度以降の人材確保にも影響が出てくるのです。

オワハラが行われる理由

ではこんなリスクを冒してまでオワハラをする企業が増加しているのは何故なのでしょうか。実はそれには、就活時期の前倒しが大きく関わっているのです。

企業面接・採用時期の後ろ倒しがされた

2015年に経団連は企業の入社試験や面接・採用時期をそれまでの4月から8月に後ろ倒しにしました。この決定は学生が学業に専念できる期間を延ばすためですが、これによって企業に“焦り”が生まれ、結果、オワハラが増加したと言えるのです。

質の確保

具体的なオワハラ増加の理由としてはまず「優秀な学生を確保する」必要性が生じたことがあります。自社の候補者が優秀であれば当然“引く手数多”な訳で、実質的に採用が始まる8月になれば他社に流れてしまう恐れがあります。それゆえに企業には早めに内定を出しあの手この手で就活生を引き留める必要が生じオワハラとなって表れた、というわけです。

数の確保

次に「採用数を確保する」ことが挙げられます。「2016 年卒マイナビ企業採用活動調査」の【採用数確保の感触】の調査項目では、「ほぼ予定数 を確保できそう」と回答した企業は全体の 17.4%に留まり、それ以外の多くの企業が「確保できるかどうか五分五分(36.5%)」或いは、「やや難しそう(23.2%)」「無理そう(12.8%)」と回答しているとの結果が示されています。つまり企業は採用数の確保に苦戦している実態があるのです。そうした中で自社の内定者流れていけば、採用予定数を確保できない恐れがあります。その結果過度なクロージングが行われる様になったのです。

オワハラにあったらどうしたらいいのか

どうしたらいい

何処からも内定がもらえない就活生もいる中、オワハラをしてまで採用したいと思ってくれる企業が存在するのは、ある意味では喜ばしいことです。しかしながら、一社だけに縛られたくない場合もあるでしょう。ここではオワハラに遭った時の対処法や心構えを解説していきます。

対処法は

いくら内定がもらえると言っても、オワハラの様なアプローチは就活生にとって決して気持ちの良いものではないでしょう。ではオワハラに遭った時、就活生がとるべきはどんな対処なのでしょうか。

企業に就活生を縛る権利はないと心得る

オワハラへの対処法は原則として応じないことです。前述の通り、就活生は自分が納得いくまで就職活動を続ける権利がありますし、そうすべきです。入社したくないなら、断固拒否しましょう。

労働相談情報センターに相談を

しかしそうは言っても、控えめな性格だったり、おとなしい人等は、企業の誘いを無下に断ることに気兼ねすることもあるかもしれません。そのような場合は労働相談情報センターに相談すると良いでしょう。なお、通学先の就活課に相談するのはオススメできません。なぜならば大学としては次年度以降の学生の就職活動に影響することを恐れ、その会社に直接苦情を言うことはできないからです。

誓約書を書かされても効力はない

また企業が内定を出す際、誓約書によって自社に入社する様約束させられることがありますが、これには法的拘束力はなく、従う必要はないことを覚えておきましょう。

誓約書には法的拘束力はない

誓約書をとる行ため自体は昔からありましたが、近年ではそこに自社に入らなければ損害賠償請求をする旨が含まれているケースもあります。採用活動には費用が掛かるのだから、入社しないならその賠償をしろ、というわけです。こうした書類を前にした就活生は心理的にプレッシャーを感じ、入らなければ大変なことになる様に思ってしまうかもしれません。しかしながら日本国憲法22条第一項「職業選択の自由」では自ら行う職業を選択・決定する自由が定められており、意に反して入社する義務はないのです。

裁判も起こされることは無い

また誓約書に入社しなければ裁判を起こす様記載されていることもあります。この場合も、実際に裁判を起こされることはありません。仮に学生を訴訟すれば瞬く間にマスコミが殺到、世間の非難を浴びて企業イメージは失墜、次年度以降の採用に影響するのはもちろんのこと、企業の存続も危ぶまれるのです。企業がそんなリスキーな事をするはずがなく、実質的にも裁判を起こされることは少ないでしょう。

覚えておくべきこと

オワハラといいますが、何も好きで嫌がらせをしているわけではありません。企業も優秀な人材を集めようと必死なのです。最後にオワハラに関して覚えておくべきことについて述べます。

期待されているが故のオワハラ

確かに、悪質なオワハラは就活生にとって許せないものかもしれません。しかし企業がそうした行動をとってくるのも、あなたという優秀な人材が欲しいからです。このことを忘れてはなりません。

鍛錬と心得、対処することも大事

また社会に出ると、オワハラ以上に辛いこと、苦しいこと、理不尽なことはいくらでもあります。ですから、来るその時に向けての訓練として“大人な”言葉遣いや態度を心がけることも大切です。それができれば、立派に社会人として仕事をスタートできるのではないでしょうか。

オワハラに対しては断固として応じない姿勢が大事

企業も就活生を困らせようとして“ハラスメント”をしているわけではありませんが、自分の進路に関して企業に口出しをされるいわれはありませんので、入社したくないなら、断固拒否しましょう。
それでも会社からの圧力が大きく、違法性を感じるようならば、第三者やハラスメントに強い弁護士などのプロに相談しましょう。

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