懲戒解雇とは何?普通解雇・整理解雇との違い

2018年3月20日309 view

懲戒解雇

会社に損害を与える等の問題行動を起こした場合、罰として下される懲戒処分のいくつかの段階の内、最も重いものが懲戒解雇です。解雇権濫用の法理から普通解雇や整理解雇でも簡単には実施できませんが、場合によっては解雇手当等も支払われない懲戒解雇により厳しい要件があります。今回は、懲戒解雇について解説します。

懲戒解雇と普通解雇との違いとは

一般的に使用者側の一方的な都合による労働契約が終了を解雇と、それ以外のものを退職と呼びます。解雇された場合、それが普通解雇なのか懲戒解雇なのかを意識することはあまりないかもしれませんが、両者は質的な部分に大きな差があります。そこではじめに懲戒解雇について普通解雇との違い等を踏まえながら解説します。

懲戒解雇と普通解雇の違い

普通解雇は、労働者の成績不良や適正性の欠如等を理由に雇用契約を終了させるものです。では懲戒解雇はどの様な性格のものなのでしょうか。まずはその定義を見ていきましょう。

懲戒処分で最も重いのが懲戒解雇

労働者が社内秩序を乱したり、会社に損害を与える等の問題行動を起こした場合に戒めを込めて与える処罰を「懲戒処分」と言います。懲戒処分には戒告や減給、停職や降格等、処罰の重さにはいくつかの段階があり、その中でも最も重いものが懲戒解雇です。つまり、懲戒解雇は普通解雇の要件に加えて「制裁」としての側面が含まれる必要があるのです。

客観的合理的理由と社会通念上の相当性

普通解雇が認められる為は客観的に合理的な理由や社会通念上の相当性が必要である旨が、労働契約法16条に定められていますが、懲戒解雇の場合も同法第15条で懲戒処分について「当該懲戒が、懲戒にかかる労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的合理的理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は無効」と規定しています。

懲戒解雇のポイントとなるのは就業規則

また懲戒解雇は就業規則と密接に関係しています。就業規則に規定のない場合、基本的には処分することはできないとされています。

就業規則について

会社は経営を行うにあたり従業員を取りまとめる必要がありますが、そのために従業員が守るべき規律や労働条件等について定めたものが就業規則です。就業規則は10人以上の従業員がいる「事業所」では必ず作成し所轄の労働基準監督署長へ届け出をしなければなりません。支店や工場等複数の事業所を持つ使用者は各事業所で届け出が必要になります。

就業規則の内最重要項目が解雇の条件

就業規則には何でも好きに規定できるわけではなく、必ず盛り込まなければならない『絶対的記載事項』と、定めるのであれば記載しなければならない『相対的記載事項』があります(労働基準法第89条)。相対的記載事項には退職手当や「安全・衛生に関する事項」、「災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項」等計8つが、絶対的記載事項には「賃金の支払いや始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、就業時転換に関する事項」と「賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項」、「退職に関する事項(解雇の条件を含む)」の3つがあります。そしてこれらの中で最も重要な項目が退職に関する事項とされているのです。なお、絶対的記載事項と相対的記載事項の一部を欠く就業規則は、効力はあるものの、“就業規則を作らなければならない”という法律上の責任を使用者が履行したことにはなりません。

懲戒解雇は簡単にはできない

しかし、いくら就業規則に載っていてもそれだけでは懲戒解雇は実施できないのです。労働者は法によって手厚く保護されており、懲戒解雇が認められるにはそれ相応の理由が必要です。

懲戒解雇が認められる判断基準は

前述の通り懲戒解雇が行われるためには就業規則に懲戒理由が載っていることが要件となりますが、もう一つ重要な前提条件があります。それは懲戒解雇を行う相当の理由があることです。懲戒解雇が認められるかは以下に列挙する基準がポイントとなります。

相当性の原則

就業規則に規定された解雇理由に社会的妥当性があるかです。例えば仮に「無断欠勤4日で懲戒解雇する」と就業規則に記載されていたとしても、それは重過ぎるので無効になります。

平等待遇の原則

また公平性も重要な判断基準となります。他の従業員が同じ違反をして、減給で済んだのに、懲戒解雇がされている様な場合は無効になります。全ての従業員を平等に扱わなければならないのです。

二重処罰の禁止の原則(一事不再理)

加えて、過去に同じ理由で懲戒処分されていないこともポイントとなります。日本には一度裁判にかけられた事件を再び法廷で争うことはできないとする法律上の考え方「一事不再理の原則(憲法39条)」がありますが、会社でも同じ原理が適用され同一の問題に対して二度懲戒処分をすることは認められていません。例えば過去に始末書の処分を受けているのにもう一度懲戒解雇をする、といったことはできないのです。

不遡及の原則

就業規則制定以前に遡って処罰することは許されません。懲戒解雇の根拠となる就業規則が制定される以前の行動に対しては懲戒解雇できないのです。不遡及の原則は法律にも適用される考え方です。

個人責任の原則

懲戒処分は労働者個人の行為に対して行う制裁です。従って行為に関与していない別の労働者に対しての責任連座制、いわゆる連帯責任は許されません。

適正手続の原則

手続きは公正に行われければなりません。例えば就業規則に「懲戒委員会で協議する」との記載があればそれに従わなければなりませんし、処分の際にはその根拠を明確にし、証拠を提示する、処分に対する不服があればそれを公正に検討するといった手続きが必要です。また弁明の機会も与える必要があります。適正な手続を経ないでなされた処分は、権利の濫用として無効になります。

懲戒解雇で気になるポイント

ここまでの解説で懲戒解雇の定義や普通解雇との違い及び正当事由として認められる条件等を把握できたと思います。ここでは、懲戒解雇が認められるのは具体的にはどの様なケースか等、気になるポイントを解説していきます。

懲戒解雇が認められるのは重大な問題があった場合

懲戒解雇は懲戒処分の最も重い段階で、多くの場合予告や手当もないのですから、些細な理由では認められません。懲戒解雇が認められるのは、基本的に労働者に極めて重大な問題があった以下の場合に限られます。

会社への背信行為があった場合等

労働契約において、労働者は勤務先会社の利益に反する様な行為はしてはならないとする“信義忠実の原則”という法律の考え方があり、会社に対する裏切り行為があった場合、懲戒解雇が認められることがあります。

経歴詐称

経歴を偽りの経歴を申告した場合です。但し、当該業務に必要となる資格や免許を有していない等の重大な詐称や経歴が採用の決め手となっていた場合等、労使の信頼関係を崩壊させるものでなければ認められません。

  • 正当な理由なく2週間以上の無断欠勤をして出勤の督促にも応じない
  • 長期間の無断欠勤や、訓告や減給等の懲戒処分を繰り返し受けても一向に改善しない
  • 度重なる遅刻や早退

正当な理由がない長期の無断や欠勤、度重なる忠告にも拘らず、遅刻早退、その他の問題行動を繰り返す労働者は、会社の利益に反する行為をとっていると判断される訳です。

重大な不法行為や規律違反があった場合等

  • 事業場内での窃盗や横領、傷害等、刑法犯に該当する行為があった
  • 賭博等によって職場規律や風紀を乱し他の労働者に悪影響が及んだ

この様な行為は職場環境を害したり、他の従業員が業務に集中できなくなる恐れがあるため、懲戒解雇が認められることがあります。

その他

重大なセクシャル・ハラスメントやパワー・ハラスメントを行った

この場合もやはり程度が著しいことが必要です。実際に大阪市の病院で指導役の男性看護師が重大なセクハラとパワハラを行ったことで懲戒解雇処分になった事例があります。当ケースは2015年から2年間に渡り、後輩の女性看護師に対して複数回、交際を迫る等のセクハラ行為を繰り返し、応じなければリポート作成の指導をしない等と脅していたものです。

転職した

他の事業所へ転職をすれば、労務を行なえない為、懲戒解雇が認められることがあります。

懲戒解雇について気を付けたいこと

これに当てはまるからと言って、当然に懲戒解雇が認められる訳ではありませんが、懲戒解雇を受ければ、再就職先にも大きく影響します。労働者側にしては何とかダメージを減らしたいものです。そこで、知っておくべき点について解説します

解雇予告手当は受けられるケースも多い

普通解雇の場合、解雇する旨を解雇の30日以上前に伝える(解雇予告)か、解雇手当を支払わなければなりません。懲戒解雇の場合、労働基準監督暑長から「解雇予告除外認定」を受ければ解雇予告手当を支払わずに即時解雇することが可能ですが、この認定を受けるためには一定の厳しい要件があります。そのため、懲戒解雇でも多くの場合解雇予告や解雇予告手当が必要となるのです。

懲戒解雇としては無効でも普通解雇としては有効か

前述の通り懲戒解雇は制裁として行われるもので、認められるには非常に高いハードルがあります。そのため会社側が当初は懲戒解雇として処分したのにも拘らず、後にその有効性を立証するのは困難と判断し、「懲戒解雇としては無効でも普通解雇としては有効」と主張してくるケースがあります。実際に平成20年の合成樹脂加工製品の製造販売等を業とする会社で営業課長として働いていた従業員が懲戒解雇された事例では、この点が争われました。

“罪刑法定主義”の存在

裁判所はまず「懲戒処分、とりわけ労働者から従業員の身分を奪う懲戒解雇においては,懲戒規定の罪刑法定主義的機能は重視されるべきである」と指摘しました。この『罪刑法定主義』とは、ある行為を犯罪として処罰するには、その行為が犯罪として裁かれる旨とそれに科される刑罰を、あらかじめ法律に明確に規定しておかなければならないとする考え方です。懲戒解雇の場合もこの考え方が適用され、ある行為を懲戒事由とする場合、その行為が懲戒解雇の対象になる旨を予め就業規則に明記されていなければならないのです。つまり“どの様な行為をしたらどの様な不利益を被ることになるのか”を労働者自身が予測できる様にしておくことが合理的であるというわけです。

問題となる範囲が違う為無効になる

また普通解雇の有効性については、例えば労働者の著しいスキル不足や勤怠不良等、“労務を適切に遂行できない状態全般”が問題となるのに対し、懲戒解雇の場合は“正当な懲戒解雇事由があるのかという点のみ”が問題になります。この様な違いから「懲戒解雇としては無効でも普通解雇としては有効」とする考えは不合理であるとして、裁判所は懲戒解雇に普通解雇の意味が含まれるとする会社の主張を棄却したのです。

懲戒解雇に不服の場合は

懲戒解雇に納得いかない場合に労働者がとれる対処は「解雇の撤回」と「賠償金の請求」に分かれます。最後に、懲戒解雇への対処法について解説します。
解雇の撤回を要求する場合、社内の労働組合や専門窓口に相談し、会社と交渉します。そこで決着がつかない場合は、調停やあっせん、労働審判等紛争解決制度での解決を試みることになり、まとまらなければ裁判という流れになります。賠償金の請求をする場合もまずは会社との交渉を試み、話がつかない様なら紛争解決制度を、解決に至らない場合、裁判を起こす流れになります。

証拠を用意しておく

またいずれの場合も証拠、つまり解雇された事実とその理由を証明できるものを用意しておくことが必要です。懲戒解雇の有効性を争う時に重要な証拠となるのは例えば就業規則です。懲戒について記載された箇所のコピーをとる等しておきましょう。また「解雇理由通知書」も有効な証拠になるので会社に請求し、取得しておくべきです。労働者から解雇理由証明書の発行を求められた場合、会社は正当な理由なくしてこれを拒むことはできません。

普通解雇と懲戒解雇の違いに注意

懲罰の側面を含む懲戒解雇の場合、再就職の際にかなりマイナスに働きますし、解雇手当や退職金が支給されないこともあります。懲戒解雇に不服なら、弁護士に相談する等して法的手段を検討するのも一つです。初回は無料で相談にのってくれる法律事務所などを利用してみるとよいでしょう。

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